実写映画版「BLEACH(ブリーチ)」観てきました!
言わずと知れた久保帯人先生原作、全74巻のジャンプコミックです。
漫画→アニメ→アニメ映画→各種ゲーム→ロックミュージカル舞台→実写映画と、ありとあらゆるジャンルでメデイア化されているジャンプの看板漫画の1つです。
原作が完結した今、実写映画化が決まり、期待と不安が入り交じりながらも観ないという選択肢はなく足を運びました。
実際に見させていただき、以下について考察してみます。
・映画のターゲットはなにか?
・映画BLEACHのキャラクター、原作と実写の徹底比較!
・原作BLEACHファンの見る映画の印象は?
・原作にない映画オリジナルの演出は?
・死神代行篇の映画化じゃ物足りない?
・映画の続編はあり?
など、解説していきます!

かっこいい一護です!
映画のターゲットはなにか?
誰に向けて作られたのか?
漫画やアニメで予備知識があるファンにとって映画は、1巻からの復習になります。
知っていることのおさらいになってしまっているため、誰に見せたいのかという疑問は、BLEACHを知らない人たちという答えになります。
映画のクローズアップは『死神代行編』
原作の始まりどおり、主役の黒崎一護(福士蒼汰)が死神になるところからはじまります。
そして、一護を死神に変えた朽木ルキア(杉咲花)が尸魂界に戻るところで映画はひとまず終わりを迎えます。
映画でクローズアップされているのは原作冒頭部分の『死神代行篇』です。
つまり、『尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇』には移りません。
『尸魂界篇』について後述で説明をさせていただきます。
映画ならではの演出は?
他のメディア化との差別化でいえば、2Dから3Dということがわかりやすいです。
そして3Dの舞台との大きな違いは、やはりCGを駆使した虚(ホロウ)たちの再現です。
舞台では限界のあるホロウの再現率はとても高く、一護の住む町空座町でのバトルも大変迫力がありました。
以上のことを踏まえると、映画版はBLEACHファンは当然前提として、同時にBLEACH初心者をターゲットとしています。
映画BLEACHのキャラクター原作と実写の徹底比較!
死神代行黒崎一護(福士蒼太)

原作においての黒崎一護は、髪のオレンジ、目の色ブラウン、という設定を除けば普通の日常を送っている高校生です。
垂れ目の三白眼で目つきが悪い印象もあり、不良っぽく見られ喧嘩を売られることも多々あります。
しかし、一護が特殊なのは霊力があり、幽霊が見えることです。
そして、家族が虚(ホロウ)と呼ばれる人間の魂魄のなれの果てである化け物に傷つけられたことをきっかけに、死神の力を得て死神代行として働くことになります。
映画では福士蒼汰さんが演じました。
黒崎一護が福士さんと聞いたとき、ぱっと見ヤンキーぽい一護を、甘いマスクで壁ドンが必殺技の王子様がどう演じるんだろう…と、正直不安でした。
賛否はあるでしょうが、やせて頬がいい感じにこけ、ヒョロッとしたシルエットは漫画の一護によく似ていました。
死神のユニフォーム死覇装もスタイルがいいのでよく似合い、ビジュアルはとても綺麗でした。
二次元のキャラを具象化したらこうなるだろう、と思わせる印象はさすがです。
イメージの違いは否めませんが、大変大事に作り込んでくれたと思います。
一護を死神に変えた朽木ルキア(杉咲花)

原作の朽木ルキアは尸魂界という現世的に見ればあの世?に近い世界の、護廷十三隊という組織に属する死神です。
迷う魂魄を尸魂界に導き、ホロウを退治するため現世に降り立ちました。
一護の妹が襲われたとき怪我をし、一護に自分の持つ死神の力を渡して彼を死神に変え、ホロウを倒させます。
が、力を半分だけ渡すつもりがすべて一護に渡して(奪われて)しまいます。
そのため本来の自分の仕事ができなくなり、半ば強引に一護を死神代行として働かせます。
映画では、杉咲花さんが演じています。
朽木ルキア役としては、実写では先に舞台の佐藤美貴さんが演じており、佐藤さんのルキア再現率が半端なく、映画はあまり期待しませんでした。

舞台BLEACHの佐藤美貴さん
ショートカットのルキア、長髪を後ろで編み込む杉咲さん。
きつい大きな瞳が印象的なルキア、優しい印象の杉咲さん。
どうして杉咲花さんがキャスティングされたのだろう?と、一護同様不思議でした。
ただ、とにかくこの素晴らしさは見ないとわからない、ということです。
立ち居振る舞いや台詞の言い回しなど、見続けていく内に原作の朽木ルキアが移っていくようにも見えました。
見た目の印象がどうこうというより、ぜひ一度見ていただきたいです。
一護の両親黒崎一心(江口洋介)、黒崎真咲(長澤まさみ)


原作での一護の父黒崎一心は、物語後半で重要な役どころになります。
死神代行篇では見せ所はあまりありませんが、自身も死神の力を持っています。
そして一護の母黒崎真咲は、一護が9歳のときに彼をホロウから守り、若くして亡くなっています。
真咲もまた霊力を持つ人であり、普通の人間には見えないホロウが見えます。
大変美しい人で、一護は真咲を太陽に例えていました。
この2人から生まれた一護の霊力が高いのは当然といえます。
映画では、江口洋介さんと長澤まさみさんが演じています。
オイオイと突っ込みを入れたくなるほど豪華な一護の両親のキャスティングです。
今回は真咲の話もメインのひとつになるので、力の入れどころだったのでしょう。
黒崎一心は良くも悪くも天真爛漫で、江口洋介さんはピッタリです。
一護の母は記憶の中では天女のように綺麗ですから長澤まさみさんでよかったです。
映画では、この真咲を死に追いやったホロウ、グランド・フィッシャーと一護の対決が見所になっています。
最後の滅却師(クインシー)石田雨竜(吉沢亮)

原作では一護のクラスメイトでありながら名前と顔を覚えるのが苦手な一護の記憶に残っていなかった、という登場の仕方をするちょっと気の毒な石田雨竜です。
手芸部の部長にして、ホロウを滅却する力を持つ一族滅却師(クインシー)の最後の1人です。
原作ではホロウ退治対決を一護に挑んだ後、かなり大がかりな戦いになるのですが、残念ながらその辺りは割愛されてしまいました。
映画では吉沢亮さんが演じています。
一護の記憶から抜けていたわけではなく、転校生だったので記憶していなかった、とささやかながらフォローされていました。
雨竜と一護の絡みはかなり減っていましたが、それでも映画での限られた出番を考えると雨竜はおいしい場面を押さえていました。
メガネに真ん中分けでいかにもマジメか!みたいな典型的な秀才キャラのため、地味に収まってしまうかと思いましたが、なかなかカッコよかったです。
雨竜は舞台ではまったく出てこなかったキャラなので、映画でようやく3D化されました。
一護の級友、茶渡泰虎(小柳友)井上織姫(真野恵里菜)


原作では中学時代からの親友のチャドこと茶渡泰虎です。
とても義理堅い頼りになる男です。
チャドもまた霊力があります。
井上織姫はBLEACHの物語全体を通してのメインヒロインです。
織姫もまた霊力を持ちますが、活躍するのは『死神代行篇』の後からです。
映画では、チャドは小柳友さん、織姫は真野恵里菜さんが演じています。
2人とも本格的な活躍は尸魂界篇からなので、残念ですが顔見せ程度になっています。
チャドの再現率が高く、できれば彼のエピソードももっと見たかったです。
織姫も、一護が好き、という描写はありましたがそれ以上の出番はあまりなくて残念です。
その他にも一護の幼なじみで織姫の親友有沢竜貴、高校から仲良くなった浅野啓吾(と思われるキャラがいましたが名前は呼んでもらえませんでした)などが出ています。
もちろん、一護の双子の妹たち、遊子と夏梨も健在です。
よろず屋浦原喜助(田辺誠一)

原作でも怪しげに登場する浦原喜助です。
浦原は元死神で、尸魂界から現世に移り住んでいます。
怪しげなものを扱っていますが、現世にいる死神にとってはありがたい便利屋で、ルキアも、そして一護もなにかとお世話になっています。
映画では田辺誠一さんが演じていました。
これもまた豪華なキャスティングです。
が、原作に忠実なコスプレのせいか、知らずに見に行った人は田辺さんだと気づくのが大変かと……
その分、目一杯浦原に寄せてくれたのが嬉しかったです。
ルキアの義兄朽木白哉(MIYABI)

原作での朽木白哉は、尸魂界四大貴族朽木家第28代目当主にして、護廷十三隊六番隊隊長です。
世が世ならお殿様。
現世でいうなら王子様。
という肩書きは、死神代行篇においては残念ながらあまり重要ではありません。
白哉の活躍も、『尸魂界篇』がメインとなります。
『死神代行篇』では掟を破って、人間ごときに死神の力を譲り渡したルキアに怒り、部下にルキアを殺せと命じる非情な美形、という印象です。
映画では、MIYABIさんが演じました。
MIYABIさんは白哉の髪型の特徴であるチクワ。
ではなく、牽星箝(けんせいかん)という白い筒状の髪飾りを忠実に再現していました。
しかし一方ではカナリ攻め込んだツーブロックでしたので、サイドからカメラが入ったときにその刈り上げについ目が行ってしまいます。
そのせいか、牽星箝から流れる髪も、写真だといいのですが動くとドレッドヘアに見えます。
魂がロックな感じなのかもしれません。
白哉というキャラはストイックで喜怒哀楽が顔に出ないのですが、映画ではかなり表情が出てしまいます。
原作との違和感は否めませんが、少し眠たげな二重まぶたは真似してできるものではなく、よく似ていました。
映画ではクライマックスでの一護との立ち会いが唯一の見せ場、という感じです。
一護の強敵阿散井恋次(早乙女太一)

原作で一護と深く関わり合っていくことになる阿散井恋次です。
性格的な波長が似ている2人は、物語が進むにつれ絆も深くなります。
映画では早乙女太一さんが演じています。
女形のイメージが強かった早乙女さんですが、素顔は普通にイケメンです。
恋次は顔に入れ墨を入れているキャラなので、顔つきがずいぶん変わってしまったと思います。
けれど、体の使い方などはさすがに舞台慣れしているだけあって見事です。
恋次はルキアと幼い頃からの友人ですが、今回の映画ではそのエピソードまで行き着くことがないので残念でした。
原作BLEACHファンが見る映画版の印象は?
とにかく原作が全74巻の長編なので、ざっくり説明することができません。
おまけにBLEACHは大変難しい漢字のオンパレードなので知らない方には不親切ですが、お許しください。
死神代行篇の次に来る『尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇』について簡単に説明します。
白哉と恋次に連れられて、尸魂界にルキアは戻ります。
人間(一護)に死神の力を渡したことは重罪として裁判にかけられます。
判決は〝死刑〟でした。
そのことを知った一護は、ルキアを救うために尸魂界に向かいます。
一護と共に雨竜とチャドと織姫が同行し、尸魂界への門を浦原が開けます。
一護たちは尸魂界に不法侵入した罪人として、死神たち護廷十三隊に追われ、それぞれの戦いを超え、ルキア救出に向かいます。
最大のクライマックスは、ルキアの処刑場目前での一護と白哉の戦いです。
この戦いで、白哉は一護の力を認めます。
次の物語に続く布石は山ほどありますが、ルキア救出、という目的は確かに果たされて尸魂界篇は幕を閉じます。
ここで、映画版の気になるところを振り返ってみました。
原作にない映画オリジナルの演出は?
映画では死神代行篇の中でも、一護が母親の敵であるホロウ、グランド・フィッシャーとの戦いと、尸魂界の掟を破ったルキアを罰するために動く白哉と恋次の話が平行して流れていました。
2つの関連性を持たせるためか、映画では一護は白哉にある申し出をします。
グランド・フィッシャーを自分が倒せたら、ルキアを見逃してほしい。
そして、白哉はいったん了解します。
この展開は完全に映画オリジナルでした。
1つの作品として映画をまとめるため、原作と違う形で結末をつけるのも1つの手です。
しかしその後、一護がグランド・フィッシャーを倒した後も、約束が果たされることはありませんでした。
映画が尸魂界篇を見越していたなら、確かにルキアを許してもらい現世に置く、ということは難しいです。
ですが、問題は朽木白哉というキャラが大きくぶれたことです。
白哉は頑ななまでに掟に忠実です。
ルキアに対しても白哉の融通の利かないほどに堅い覚悟が、掟のために義理とはいえ妹の命を奪うことも厭わず、という極端な行為に出てしまいました。
つまり、白哉の気持ちひとつでルキアの処遇をどうこうすることはできず、一護との約束自体が成り立っていないのです。
そして、嘘をつく、騙す、などの行為は白哉の中に存在すらないことから、今回の映画のシナリオ展開には疑問を持たずにいられません。
原作を大事にして作られたことがわかるだけに、この演出は残念でした。
死神代行篇の映画化じゃ物足りない?
BLEACHという作品が一気に盛り上がりを見せた場所は尸魂界篇でした。
死神代行篇は確かにBLEACHという作品を作る上での大事な下地です。
しかし、BLEACHがジャンプ連載当時に読者の心を掴んだのは間違いなく尸魂界篇です。
護廷十三隊という死神の組織と、一護たち現世組の戦いが物語をより華やかにしてくれました。
現世という日常から離れ、尸魂界というBLEACH特有の世界観も魅力的でした。
映画は空座町という、一護が住む町を詳細に作り上げており、一護の部屋のベッドカバーまでも原作に寄せていたりと、大変気遣いを感じました。
けれど、死神代行篇は起承転結でいうことの起に当たり、この先に盛り上がりが待っていることを知っているファンとしては物足りなく感じてしまいます。
けれど、一護が霊圧を高めるためにルキアと修行する場面が何度も出てきたり、中盤のたるみももったいなかったです。
しかしそれでも、空座町駅前での戦いは大変迫力もあり、ラストに向けてのスピード感は申し分なかったです。
映画の続編はあり?
映画のラストは、すべての人間が朽木ルキアという存在の記憶がなくなる、というものでした(原作では一護や霊力を持つ人は覚えています)。
原作とは違い、ルキアは一護から死神の力を戻してもらってから、白哉たちと尸魂界に戻ります。
そして、ラストの些細なきっかけで一護はルキアの存在を思い出し、そこで映画はいったん幕を閉じます。
『BLEACH死神代行篇』とラストにバーンと出てきます。
ああ、このあと尸魂界篇を作るための準備か……と、予備知識なしで行くと少し力が抜けます。
最初から続編を作ることが決まっていたのならいいのですが、まだ確実ではない、ということであれば、ここで終わることも充分にあり得るわけです。
原作が終わり、新たなBLEACHに触れることがなくなってしまった今、どんな形でも繋がっているのは嬉しいことです。
丁寧に作り込まれた映像は、一瞬だけ尸魂界を見せてくれました。
あの映像がメインになってくれたら、どれだけ迫力があるだろうかと想像が膨らみます。
なんだかんだとご託を並べつつ、本当は続編ができてほしいと心から願っています。
まとめ
・映画版はBLEACH初心者向け
・内容は死神代行篇のみ
・役者は違和感が拭えないが好演
・原作とは異なる演出あり
・続編を匂わせる演出で終わる
主観過多の文章になってしまいましたが、受け取り方のひとつとして受け止めていただければ幸いです。
映画がひとつのきっかけになり、原作に手を伸ばしていただければさらなる幸いです。
